【琥珀色の伝言】 -堤 誠士郎 探偵日記-


ほら見て、と松木さんが私に合図を送ってきた。

先生の沈黙がはじまったわね。

こんなとき、私たち助手はひたすら静かにすごし、動きを慎むようにしている。

そうして欲しいと先生から指示があったわけではないけれど、静かに見守っていたいと思わせるほど、先生の集中力は素晴らしい 。


女ばかりの学校を卒業して、こちらへお世話になって三年がたつ。 

縁談を嫌がる私を見かねた父の友人が堤先生に引き合わせてくださった。

同級生のほとんどが卒業と同時に縁談を受け入れていた。

そんなの我慢できませんと、働く理由を述べた私に先生はこうおっしゃった。



「藤波さん 貴女のその気持ちを大事にしなさい 

 当たり前だと言われることに疑問を持つのは良いことです」



先生は私に新しい世界を広げてくださった。

学べる場所があるというのは、なんと素晴らしいことでしょう。

少しでもお役にたつように、懸命に勤めなければ。


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