【琥珀色の伝言】 -堤 誠士郎 探偵日記-



あらあら、松木君も藤波さんも、じっとかしこまってしまって。

あの人が沈黙をはじめると、ふたりとも息をつめて動きを止めてしまう。

そんなことしなくていいのよ、と何度も言ってみたけれど、そのたびに ”いいえ 先生の推理の邪魔はできません” と大真面目に言われてしまったわ。


その気持ち、わからなくもないわね。

普段の穏やかな顔は、推理に入ると柔らかさを消し去ってしまう。

人を寄せ付けない雰囲気を放ち、周りを黙らせてしまうのだから、たいしたものよね。


彼は私にはとても優しい人、そして、秘めた強さを持った人。

留学中、スケッチ旅行先で知り合って、そのあと海を越えて会いに来てくれた。



「毬代、君に出会うために僕はここに来たのかもしれない」

 

留学も私に出会うために決められた運命だったなんて、そんな熱烈な言葉を添えて求婚してくれた。

誠士郎、貴方には思う存分やりたいことをして欲しい。

私はキャンバスに向かいながら、貴方を見つめているわ。




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