【琥珀色の伝言】 -堤 誠士郎 探偵日記-
グリーティングカード
・・・ 依頼品が放つ無言の言葉 それは琥珀色の伝言 ・・・
『先日、の遺品を整理しておりましたら、このようなカードが出てまいりました。
とても大事な物らしく、文箱の奥にありまして、それだけ綺麗に包まれ特別なものである印象がありました。
文面ですか?
男性からの、あの……恋文といってもいいでしょう。
ですが、名前もなく、どなたが母へ送ったものなのかわからないのです。
母がどうして、そのような……父以外の男性からの手紙をずっと持っていたのか、それが気になりまして……
娘の私からみても、父と母は仲の良い夫婦でしたから、母の裏切りだとは思いたくはないのですが、手紙の日付に納得がいかないものですから
納得いかない理由ですか?
カードが送られてきた頃、父は日本におりませんでした。
父の不在の間に送られてきた、男性からの告白のカードです。
その事実が私を苦しめるのです。
ですが……
なぜ母がそこまで、このカードを大事にしていたのか知りたいのです。
娘としては、すぐにでも処分してしまいたい。
けれど、母に秘密があったのなら、私は知っておくべきだと思いました。
父ですか?
仕事で欧州に一年ほど滞在していたと聞いております』
忌まわしいものでも触るように、彼女はそのカードをテーブルの上に置いた。
美しい絵柄のカードは、彼女がいうように恋文にふさわしいもので、文章もそれに見合う言葉がつづられており 短いが贈り主の愛情を表す文面がしたためられていた。
大事にしまわれてきたのだろう。
時を経た物であるのに、カードの美しさが損なわれることなく今に伝えられたのだった