チェックメイト
いつの間に居なくなったんだろう。

「どうしたの?」

「あ、いや…何でもない。」

「そう?帰ろっか、三次会あるみたいだけど私たちはいかないもんね。タクシーで帰る?」

「うん、そうしようか。」

引き出物という大荷物もあるし、凜と一緒ならタクシーで贅沢に帰ってもいいよね。

「って、あれ?バッグがない!」

荷物の整理をしていたらさっきまで手にしていた筈のバッグがないことに気が付いた。

しまった、さっき先輩に預けたまま返してもらってない。

「亜弥、一緒に探すよ。」

「いや…バッグというか、人を探すというか。」

私の言葉に凜が首を傾げても慌てて上手く説明できない。

どうしよう、このまま先輩が持って帰ったら財布もスマホも手元にないことになる。

「小林。」

急いで先輩の姿を探す私に後ろから声がかかった。

顔を見る前にそれが誰なのか分かる。

「藤原先輩!」

「ほれ。」

「す、すみません!長い間こんなもの持たせてしまって!」

「いや。女避けに一役かってくれたぞ。」

眉を上げて肩をすくめる様はまさにプレイボーイそのもの。

なるほど、わざとらしく女性物のバッグを持つことによって絡もうとする女性陣を遠ざけたのだ。

「利用しましたね…。」

「おいおい、親切な先輩に向かって何て事を言うんだ。」

普段ではしないような口ぶりに腹黒さが見えてため息が出る。

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