チェックメイト
「先輩、ありがとうござい…。」

「あの~この後予定ってあります?」

先輩に挨拶をしようとしたら凛が先輩に声をかけた。

何をしようとしているんだろう、まさかもう一軒誘うつもりなのかと私は耳を疑った。

でも先輩の返答を待たずに凛はこの後さらに耳を疑う発言をしたのだ。

「無いなら亜弥を送って行ってもらえませんか?」

「な…っ!凛!?」

「私、新井さんに送ってもらうことになったので。亜弥が一人になるんです。」

「え!?」

自分とか先輩がどうこうの前に、凛が新井さんと一緒に帰る事実が一番の衝撃だった。

明らかに苦手そうなタイプなのに。

「あの人ネットワークありそうだから今後の婚活のためにお近づきになっておくわ。」

小声で企みを明かした凛へ何の言葉も出ない。

毎度凛の行動力には感心させられるばかりだわ。

「なので、先輩さん。遠慮なくどうぞ。」

美しい顔でほほ笑む姿はどこか怪しげな雰囲気が漂うように感じたのは私だけだろうか。

私が半分呆れていると横にいる先輩が感心の声をもらした。

「分かった。…じゃあ遠慮なく。」

「え?先輩?」

「小林、奥に乗れ。」

「え?」

押し込められるような形でタクシーに乗り込むとあっという間に車は発進してみるみる凛たちの姿が小さくなってしまった。

なんだ、一体どうしてこんな事態になってるんだろう。

横に先輩がいる。

静かな車内にはエンジン音と街の喧騒しか聞こえてこない。

ネオンの光が先輩を照らしては流れていく。

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