チェックメイト
頭の後ろと腰を抱かれて逃げ出すことはできない、驚いた反動で思わず先輩の胸を押し返してみてもすぐに抱え込まれてしまった。

突然の出来事に頭がついていかない。

噛み付くようなキスが終わると私は肩で息をするくらいに翻弄されていた。

「…ずっと俺が狙っていたことに気づいていなかったんだろ。」

「え?」

「昇格試験が終わったら仕掛けようと思ってたから…今日はいいタイミングだったな。」

「ひゃっ!」

そういいながら先輩の唇が首筋に下りてきて優しく押し付けられた。

もうそれだけで心が暴れだしているのに先輩はさらにそこで言葉を紡ぎだす。

「危険な感じって正解だよ。俺は今日ずっと小林のこと狙ってた。絶対に手に入れるって狙ってた。」

先輩が話すたびに力が抜けて立つこともままならなくなっていく。

意味があるのかないのか震える手で先輩の肩を掴んでみても上手くいかない。

「先輩…っ。」

「警戒しながらも部屋に上げたってことは小林も意識してくれてたってことだろ?」

「まっ…て!先輩…っ!」

渾身の力で押して何とか止めてもらおうと訴える。

このままじゃダメだ、流されてしまう。

「待てない。」

尚も唇は私を攻めたて片方の手が下へと伸びていくのが分かった。

「やめて…っ!私、好きなんて言ってない!」

一夜限りの関係なんて絶対に嫌だ。

そんな女だなんて思われたくない。

「じゃあ、どうぞ。」

「え…?」

今までの拘束が嘘みたいに先輩の腕がほどけた。

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