チェックメイト
私の腰に軽く先輩が手を当てる、ただそれだけを繋がりとして私たちの間に空間ができる。

先輩がどういうつもりなのか全く分からなくて私は戸惑うばかりだ。

「好きって言いたいんだろ?」

「は?」

その言葉にハッとする。

まさか自分を好きだと言わせるつもりなの?

「ち、違います!そういう意味じゃ…っ!」

「俺は好きだよ?」

「え…?」

次々出される言葉に振り回されるばかりだ。

でも曖昧にして振り回して事を進めようとしている、そんな気がして焦ってしまった。

「違います!そういうのじゃなくて、私はちゃんと好きな人としかこういうことしたくないんです!」

二人を包んでいた熱が治まってきたのを機に何とか抜け出したかった。

ぐいぐいと力を入れて先輩の腕の中から逃れようともがいてみる。

「それにっ!先輩が一夜限りの女遊びをする人だったなんて知りたくなかったし!その相手に私を選んだなんて思いたくないんです!」

極めつけだと思いっきり先輩の胸を押して完全に私たちは離れた。

頑張りすぎた私は肩を上げて全身で呼吸をする始末。

目の前では先輩が目を丸くして呆然と私を見ていた。

その姿を見たら急に辛くなって、悔しくて、惨めで、とにかく一人になりたくてリビングに飾ってある物を投げつけた。

「おわっ!」

「帰ってください!こんなおめでたい日にナンパしないで!!」

「ちょっ…小林!違うって!」

「遊びなら他を当たって下さい!!もう出てって!!!」

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