俺はお前がいいんだよ
貞操の危機とか思っていた割には、ふかふかのクッションに抱かれているようであっさりと眠気に陥落した。
ふわふわの夢の中で、抱き上げられた感覚と男性のスーツの香りにうっすら意識が覚醒する。
だけどどうしても瞼が重たくて、目を瞑っていたら、文句らしき声が聴こえてきた。
「どんだけ無防備なんだか」
エレベータに乗り、何階か分からないところで下り、私を抱え直して鍵を開ける。
「本当にチビだなぁ。軽すぎる。もっと食わせないと」
そのまま部屋の中を移動して、柔らかなクッションのベッドの上に落とされた。
「ウケる。ベッドに対して小さすぎねぇかコイツ」
半ばあきれたような言葉ばかりなのに、胸をキュンキュンと締め付けるのは、声が優しいからだろうか。
大きな手が、私の額を撫でて、前髪をかき上げる。
「……可愛いな」
やめて。そんなこと言われたら寝たふりが続けられない。
続けて、そっと額に落とされる唇に、平静を保っていられず、顔がぴくぴく震えてしまう。
「……口、にやついてるぞ」
どうやらバレたらしい。いやでも、ここは寝たふりを続けてみよう。
「起きねぇと襲うけど、いいんだな」
「うわあ、だめですっ」
勢いよく起き上がると、桶川さんはニヤニヤ笑いながら私を見ていた。