俺はお前がいいんだよ
「どこから起きてたんだよ」
「う……ついさっきです」
「まあいい。今日は疲れたんだろ。寝ろよ。週末はベッドを買いに行くからな」
「へ?」
「危なっかしくてひとり暮らしなんてさせられないっての。俺が決めたことに逆らうなよな」
「いやいやいや、そういうのって独断で決めることじゃないと思うんですけど」
「だったら俺が納得するくらいのセキュリティの部屋に引っ越せるのか?」
いや、それができるくらいなら転職したときにやっているから。
ストーカー森上さんに家に来られても引っ越せないのは単純に経済的理由だから。
「くっ……無理、です」
「だろ。だったら決まり」
決まり……って。
よくよく見るとこの寝室、八畳くらいある。
これともう一部屋あって、リビングもあるってことでしょ? 何気に家賃だってすごくない?
きょろきょろあたりを見回して青くなっていたら、桶川さんが呆れたように言った。
「お前に金払えなんて言ってねぇだろ。ただ、傍に居ろって言ってるだけだ」
「でも、暮らすとなれば家賃とかですね」
「いらねぇよ。気になるなら掃除でもしてくれればいい。もう一つの部屋がものすごいことになっているから」
「え?」
目も覚めてしまったので、桶川さんの案内で部屋の中を探検することにする。
リビングは、あり得ないほど大きかった。三人は座れそうなソファに、同じくらいの幅のローテーブル。大型のテレビが壁際にあり、その脇とソファの後ろにスピーカー合計四つもあった。