俺はお前がいいんだよ
「映画見るときはすごいいいぞ」
言われて棚を見れば、映画のDVDが山のように置かれている。
更に奥の部屋には、パソコンが何台も置かれていた。それ関係の本で本棚は埋まり、外された部品も配線むき出しのまま山積みになっている。
「な、なんですかこれ。パソコンって一つあれば十分じゃないの?」
「いやいや足りねぇだろ。ノートとデスクトップとデータ保管用にサーバーと……。技術革新の激しい世界だからな。すぐスペックが悪くなるだろ? 古いのもデータが残ってるから捨てられねぇしで」
「初めて見た! こんな機械部屋!」
「こいつを何とかしてお前の部屋を作りたいから、まあ協力しろよな」
呆然とする私の頭上に、チュッと可愛いリップ音が落ちる。
ああ神様。
ストーカーの被害から逃れた後は、なんと電脳男子との同居生活が待っているとは。
世の中は、本当に何が起こるか分かりません。
「もう疲れました。寝ます」
「ベッド使っていいぞ。今日は俺がソファで寝るから」
「そういうわけにいきません。家主がベッドで寝てください」
頑なに言い張って、毛布を借りてソファで寝たのだけれど。
翌朝目覚めた時は、ふかふかのベッドで桶川さんに抱きしめられていた。
いつの間に、と思ったけれど、シてないのは体の楽さからもわかる。
寝顔の可愛さにキュンとして、意外と紳士……と思ったら嬉しすぎてむずがゆくて、桶川さんの顔が見られなくなった。
ああ、早く機械部屋を片付けよう。
このままじゃ、私、心臓が持ちそうにありません。
【Fin.】