横顔のナイト【短編】
……あ、梨木くんだ。


梨木優吾(なしきゆうご)くんは、運んできた机をあたしの目の前の位置に置いてから、机に乗せていた椅子を下ろした。

彼は席につくなり、早速机の上に突っ伏して、いびきをかきはじめる。


ちょっとだけ椅子を後ろに引いて寝ているから、くたびれたワイシャツの背中との距離がとても近くなる。


……太陽の匂いがする。お布団を外で干したみたいな、あったかい匂い。


二年生になって、初めて同じクラスになった彼とは、今まで話をしたことがない。


今まで話す機会もなかったけど、梨木くんは寡黙っていうか、あたしは声も聞いたことがないくらいで、とにかく喋らない人なんだと思う。


部活は確か入っていなかったと思うけど、身体はどちらかというと筋肉質。多分、背だって高い方。


そんな彼を一言で表現するなら、男っぽいって感じ。

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