横顔のナイト【短編】
「清水。小テストやるから、梨木を起こしてくれないか?」


先生から突然声をかけられ、あたしはシャープペンシルの先で彼の背中をつつく。


「梨木くん、起きてよ。テストだって」


声をかけても、彼のいびきによってかき消されてしまう。

信じらんない。机の上なのに、こんなにぐっすり眠れるなんて。


「ねえねえ、起きてよ。テストだよ」


シャーペンでトントンと背中を叩き続けると、いきなりその大きな身体がびくっと強張り、彼はゆっくりと身体を起こした。


「起きたか、梨木。テストするぞ」


彼は無言のまま自分の後頭部をわしゃわしゃと掻きながら、机の中に教科書をしまい込んだ。

なんとなく、その一連の仕草が熊のように見えて、ちょっとだけかわいいなって思った。

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