迷子になった恋心
コーヒーが運ばれてきて、二人は無言で一口飲む。

「…圭織」

先に口を開いたのは諒太だった。

カップから目線をあげ、諒太の顔をみた瞬間、諒太が何を言うつもりなのかわかった気がした。

「…終わりにしようか」

苦笑いを浮かべながら諒太が私の目をはっきりと見た。

「うん、そうだね…」

私も諒太から視線をそらさずに答える。

「…やっぱり同じ事、考えてた?」

「うん…。ホント嫌になっちゃうね、同じすぎて」

二人で笑いあっている和やかな姿は周りからはきっと別れ話をしているとは思えないだろう。

「諒太?」

「ん?」

「他に好きな人できた?」

「いいや、いないよ。圭織は?」

「いないよ」

お互い別に他に好きな人ができたわけじゃない。

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