迷子になった恋心
「行こうか」

コーヒーを飲み終わった私達は静かに席をたち店を出た。

学生時代よく通ったハンバーグが美味しいこの店。

もう諒太と来ることはないんだなぁ、と思うと少し胸が痛くなった。

無言のまま二人並んで駅へと向かう。

駅前の公園へと入ると諒太が足をとめた。

「よく来たよな?ココ」

「うん、デートの帰りはいつもココでたくさん話したね」

「離れがたくてずっとしゃべってたな」

「バイバイって言いたくなくてね」

懐かしい、今より少し幼い二人を思い出しながら、公園にあるモニュメントを見上げる。

穏やかだ。

『別れ』は悲しいはずなのに、辛いもののはずなのに、どうして私達は笑っていられるのだろう。

『別れたい』と思っていたわけじゃないし、これが一番いい結論だと思ってはいる。

実感がないのだろうか。それすらもわからない。
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