迷子になった恋心
「…初めてキスしたのもココだよな?」

「やだ、覚えてたの?」

「当たり前だろ?めちゃめちゃ緊張したもん」

「私だってドキドキしてたよ!…初めてだったし…」

「オレだって…」

なかなか奥手だった私達は高校時代はお子様のようなお付き合いしかしてこなくて、本当に『恋人』として付き合ったのはお互いが初めてだった。

だから私は諒太しか知らない。

諒太も私しか知らない。

それでいいと思っていたし、そうありたいと思っていた。

別れを選んだ今、この先、諒太は誰かを抱くのかな。私は誰かに抱かれるのかな。

想像がつかないや。

「…圭織…」

名前を呼ばれ諒太を見上げると5年間見慣れた顔。

「なぁに?諒太…」

うっすらと笑みを浮かべながら返事をすると

「…最後に…もう一度、キスしようか…?」

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