曖昧ストラテジー【短編】
私のターン
手首につけた、ゴールドに輝く細身の時計がシャラッと音を立てた。


それに、気づいているのかいないのか。


相変わらず無表情のまま前を見つめる彼の感情を読み取ることは、できない。


もはや暗号レベルの単語たちが飛び交う5限目、科学の授業。


そうそうに理解することをあきらめた私は、隣の席の飯島を観察中。


いつ見ても、誰もが認めるイケメン。


『表情が乏しいのが、玉に瑕だ』なんて親友の由梨は言うけれど、それも飯島の魅力のひとつだと、個人的に思っている。


ミステリアスで、どこかふわふわした雰囲気で、時々見せるレアな笑顔はちゃんと16歳で。


甘くふわふわした外見なのに、自分の足でしっかり立っている感じがして。


そんな飯島の心の中に、居座ってみたい。


なんて、思うのだ。
< 1 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop