曖昧ストラテジー【短編】
と、ガタガタと机を動かす音が聞こえた。


とん、と江口の机が俺の机にくっつく。


「見せてあげる」


満面の笑み。


可愛いなぁ、と零しそうになって、慌てて飲み込んだ。


「ノートはあげられないけど」


「ルーズリーフ、ある」


なら良かった、と江口は笑って、前を向いた。


いつもより近い江口の横顔に、心拍数が上がる。


顔が、赤い気がする。


けれど、せっかく教科書を見せてくれてるんだから、ちゃんと授業受けないと。


気持ちを落ち着かせて前を向く。
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