曖昧ストラテジー【短編】
「飯島は、緊張しない?」


ム、と唇を尖らせて、拗ねた子供のように聞いてきた江口に、目を瞬かせる。


ちょっと、予想外。


なに、その表情。


初めて見た。


途端に、耳が熱くなる。


あ、これはまずい。


今度は俺が、顔を背ける番になった。


「してるよ、緊張」


なんだこれ、恥ずかしい。


「へぇ!」となぜか嬉しそうな江口の声が聞こえてそちらを向くと、彼女は嬉しそうに口角を上げている。


「そっか、嬉しい」


へへへ、と笑った江口に、心を貫かれた。


ああ、もう、可愛いな。



7時限目、古典。


忘れ物も悪くない、なんて。
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