曖昧ストラテジー【短編】
「あの、目の前で食べられると、ちょっと緊張するというか、恥ずかしいというか」


「うーん。なら江口、目閉じてなよ」


「へ?」


そうしているうちにも、飯島はラッピングを解き終えて、ついにカップケーキが飯島の口に運ばれ………。


ああ見てられない。


慌てて目を閉じる。


……………。


………………。


無言。


「あ、あの。
まずかったら、捨ててもいいよ」


だから目の前で食べてほしくなかったんだけどな、と八つ当たり。


けれど、飯島は予想外の言葉を放った。


「もう一個、貰ってもいい?」


「え?」


思わず、目を開ける。


「へ?うそ、もう食べ終わったの?」


「うん、美味しかった。ごちそうさま」


今日は、飯島、よく笑うなぁ。


ちょっと、かっこよすぎる。


それに、美味しかったって。
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