曖昧ストラテジー【短編】
「失礼しまーす」といつもより小さな声で入ってきた、江口。


怒られる、と思っているんだろう。


いや、教師なら普通はそりゃあ怒るけども。


「授業中、毎時間睡眠記録更新おめでとう」


「あ、ははは、ありがとうございます」


「電光石火のような速さで眠りに入るよな。もはやすごいぞ」


「お褒めにあずかり光栄です」


「そんな江口に、すてきなプレゼントをやろう」


瞬間、江口の顔が引きつった。


「その机の上に置いてあるプリント20枚。
解けたら帰っていいぞ」


ひっ、と喉から悲鳴が出ている。


顔面蒼白。


「ま、本来は俺が付き添って1からビシバシ鍛えていくんだけど」


「…………それはいやだな」


「本音でてんぞ」


江口がおっと、という風に口をふさぐ。
< 24 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop