曖昧ストラテジー【短編】
「だがしかし、今日の俺には生意気な江口に付き添う時間がなくてだな」


途端、パッと顔が明るくなる。


「先生、それじゃ」


「うん、他の奴に付き添ってもらうことにした」


江口は、ガクっと、あからさまに肩を落とした。


本当に、分かりやすいな。


そんな、可愛い生徒のために、担任からの粋な計らいだ。


「と、いうわけで、よろしくな、飯島」


「はい」


「ん?飯島⁉︎」


現れた飯島に、驚いた顔をした江口は、次第に笑顔になって、それから突然握りこぶしを作った。


「先生、私、やる気出てきました。
ありがとうございます!」


そんな江口を見て、飯島は呆れたように、優しく笑う。
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