星のみぞ知る
「帰蝶!久しいのお」

「殿下!?」


城内の廊下で、思わぬ人と出会ってしまった。

豊臣秀吉。

今は、関白殿下と呼ばれ、日ノ本のほとんどを手に入れた人だ。

ちなみに、帰蝶(きちょう)っていうのは私の通称。

私の母上の実家では、女子も諱(いみな)と通称をつけられるの。

諱っていうのはその人の本当の名前で、自分の親か、主しか呼ばせてはいけない名前なのね。
で、通称っていうのは、親や主以外の、他の人に呼んでもらうための名前。

そして、女子はその諱を、簡単に誰かに教えてはならない。
だから、その諱は今は秘密ね。


「殿下、なぜここに…?」

「おう。お前と、お雪に話があってのう」

「そんな、いらっしゃるなら教えてくださればよかったのに…謁見の用意もしておりませぬ」

「ああ、よいよい。お前たちとワシは、家族のようなものだろう?」

「……そう、ですね」


わずかに、言葉が濁ってしまった。

あーいけない、天下人に対して、そんな態度を取るなんて、子どもじゃないんだから。

我慢我慢。


「では、侍女に案内させましょう。奥の広間でよろしゅうございますか」
「うむ。できればな、城中の者をみな集めて欲しい」
「みな…ですか?」
「そうじゃ。今おる奴だけでよい」
「かしこまりました」


全員集めるって…
一体何の話をするつもり?

私とお雪に話があるって仰ってたのに…

あっ!

まさか……


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