星のみぞ知る
はあ。

「溜息、出てますよ」

「…お雪」

お雪は、一応私の姉なのに、敬語を使ってくる。

まあ、お雪は私だけじゃなくて、どんな人に対しても敬語だけどね。

私と違って上品で、お淑やかで、皆から好かれるお雪。

でも、あと数日後には離れ離れ。


「…まあ、溜息が出るのも仕方ありませんね。……本当に、大丈夫なのですか?」

「うーん…まあ、何とかなると思うけど、大丈夫ではないわ」

「…ごめんなさい」

「どうしてお雪が謝るの。姉上は、何にも悪くない」

「…私が、豊臣に嫁げば良かった。私も、藤吉郎のことは好きになれません。けれど、あなたよりは、あの人のことを憎んでいない」

「…………」

「…今も、憎んでいるのでしょう?」

「…確かに、忘れることは無理ね。藤吉郎がやったことは、絶対に許せない」


そう。

藤吉郎は、許せないことをした。


6年前…

藤吉郎は、お市様の再婚相手の柴田様と、戦を始めた。

結果は、藤吉郎の圧勝。

お市様は、夫の柴田様と共に自害した。

藤吉郎に殺されたも同じだ。

そのせいで、お市様のお子の、茶々様、初様、江様は、行くところがなくなって、藤吉郎に引き取られた。

自分の親を殺した相手に引き取られるなんて…

茶々様たちは、どれほど苦しかっただろう。

そして、清須城で別れた母上も、その戦いで自害した。

お市様が自害するとなれば、その侍女である母上も、同じく自害しなければならないからだ。


ただただ、絶望した。

あのお美しかったお市様も、

大好きだった母上も死んだのに。

私だけが、こんなところで、のうのうと暮らしていていいのか。

大事な人たちを殺した男の下で、こんなに平和に暮らしていていいのか。

しかし、私如きには何も出来ない。

私は無力だ。


その思いや、葛藤が、いつしか藤吉郎への憎しみに変わっていた。
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