支社長は取り扱い要注意!
わたしが思っていることも、当然のことながら支社長の耳に入っていないだろう。

「――どうして…」

支社長が呟いた。

「どうして、だろうな…」

何が何なのか、わたしにはよくわからない。

支社長は何を思って、そんなことを呟いたのだろうか?

わたしのこの気持ちは、どうすればいいの?

面倒を見ると言う名目で支社長と同居して、支社長の厳しいけれど温かい優しさに触れて、酔っぱらうと甘えん坊になって、キスまでされて…支社長と過ごした思い出が頭の中を回っている。

「ついたぞ」

支社長の声に窓の外を見ると、車は家に到着していた。

わたしは車を降りると、逃げるように玄関へと入って行った。

もう無理だった…。

これ以上、支社長の顔を見たくない…。
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