支社長は取り扱い要注意!
『ニノミヤ硝子株式会社』の本社ビルの社長室に、俺はいた。

――支社長が好きです

泣きながら自分の気持ちを言った高畑まひるの顔が頭の中をチラついていた。

それに対して、俺は気づいてしまった。

高畑まひるに恋をしていた自分に、俺は気づいた。

その気持ちに驚いて、高畑まひるの気持ちにも驚いたせいで、俺は何も返すことができなかった。

俺のせいで、高畑まひるは逃げてしまった。

「急にやってきて、一体どうしたって言うんだい?」

アポなしで突然やってきたにも関わらず、社長室へと迎え入れてくれたおじさんに俺は感謝をしながら唇を開いた。

「おじさん」

呟くように呼んだ俺の顔をおじさんは見つめた。

「俺は、会社を継ぎません」

未来も約束も何もかもいらない。

家も会社も、高畑まひるが望むならば全部捨てたっていい。

彼女と共に生きたいから。
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