支社長は取り扱い要注意!
「女か?」

そう聞いてきたおじさんに、
「恥ずかしながら、女です」

俺は答えた。

「彼女は多少世間知らずなところはあるんですけれども父親思いで、何より一途なんです。

でも彼女は俺の邪魔になりたくないからと言って、俺の前から姿を消しました。

皮肉なものですよ。

彼女がいなくなった直後に、俺は彼女に恋をしていたことに気づいたんです」

ハハッと、俺は声を出して自嘲気味に笑った。

「それと同時に、彼女と一緒に生きたいと思いました。

そのためには俺が何もかも全てを捨てて彼女にあわせなければいけない、と」

「…そうか」

おじさんは呟くように返事をした。

「バカですよね」

自嘲気味に言った俺に、
「バカじゃないよ。

それって、すごくえらいことだと思う」

おじさんが言い返した。
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