「先輩、甘えるってなんですか?」
自分の部屋に入ると、私は制服を脱いで、部屋着に着替えてそのままベッドの上に座った。





ご飯も食べたくない。




ただ、さっきの言葉だけが頭の中を駆け巡る。




私は、何でここにいるの?




どうして、私を産んだの?




「・・・・・・・・あははは。おかしいよ。どいつもこいつも。大人なんて、・・・・汚い。汚い。汚い。・・・・・自分のためなら何でもする。離婚だってなんだって、簡単で楽なもんなんだ。」





部屋に自分の声だけが響く。




「ついに、仮面家族が終わる。」




そうだ。





そうだよ。





ずっと偽りだらけだったこの関係が終わるんだ。





お父さんは自分だけ1人、子供も親権も置いてここを出ていく。





お母さんは仕事に没頭して、嫌な顔を見ずに過ごせる。





私だって、仮面家族を見なくて済むんだ。




あぁ、こんなに嬉しいことはないじゃん。





喧嘩の声も、喧嘩する姿も、何も見なくて済むんだ。




これ以上、満足いくことはない。






そして、











最後まで、お父さんの口から私たちのことについて言われることもなく、お母さんが私たちに謝ることはなく、離婚への準備だけが勝手に進んでいった。





私は指くわえて見てるだけの傍観者でいいらしい。




< 103 / 191 >

この作品をシェア

pagetop