「先輩、甘えるってなんですか?」
私はそっとその場を離れて、外に出る。




何分かして、お父さんが出てきた。




いつもの鞄を持って、首にはカメラをさげていた。




お父さんがゆっくり私の元へ来る。




「ありがとな。沙代。」





私は下を向いたまま、頷いた。





なんて言ったらいいのか、言葉が浮かばなかった。





お父さんは車に鞄を置いた。





その時、自然と私の口から言葉が出た。





「お父さんは、写真家になるの?」




ずっとなりたかった夢を追いかけるんだろうか。




お父さんが私の方を向く。





「そうだな。・・・・・会社辞める予定だし。でも、ちゃんとお前らには金を入れるから大丈夫だ。」





違う。





私が聞きたいことはそういうことじゃない。




お金、お金がなんでも解決してくれると思ってるの?




「・・・・・そうなんだ。良かったね。やりたいことをまた続けられて。余計なものも、愛してない人も、面倒な子供も、全部全部っ!!無くなったんだもんね!!」





いつの間にかそんなことを叫んでいた。





涙は出ない。





ただ、ずっと、ずっと抱えていた本音が溢れだしてきた。




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