「先輩、甘えるってなんですか?」
駅の端のほうにしゃがみ込むと、ポケットにある硬いものに気づく。




・・・・・・・スマホ。





今何時何だろう。




すると、私の頭の中にある言葉が思い出される。




「なぁ、水族館って楽しいか?」




鳳駕の言葉。




・・・・・・・・・鳳駕は、それをどんな思いで、私に言ったの?




それは、




どういう意味なの?




くるみ先輩と行くんじゃないっけ?




クリスマスの予定なんて話してくれなかったくせに、わざわざ水族館とか言う?




でも、




私は、




勘違いでもいいから。





私は立ち上がって、水族館に走る。




時間的にもう閉まってるはず。




でも、




それでも、




行ってみなきゃ分からない。




駅から近い水族館。




その門の前に、人の影。




私は足を止めて、歩く。




「・・・・・・・・・なんで?」





「よぉ。やっと来たか。」





鳳駕。





鳳駕。





「っ、ぅうー・・・・・・。なんでっ、何でいるの!?」




「さぁ、俺が口滑らせちゃったからなー。」





鳳駕が私のところに寄ってきた。





私の目からはずっとずっと出なかった涙が。




鳳駕がそっと私の頭に触れる。




その手に安心して、また涙が零れる。




鳳駕。




鳳駕の手だ。




「・・・・・・・鳳駕っ。」




「ん?」














「今日だけ、甘えていいですか?」





















「・・・・・・もう、独りで抱えなくていい。」













「俺は、どこにも行かないから。そろそろ、素直になれ。」


























< 156 / 191 >

この作品をシェア

pagetop