「先輩、甘えるってなんですか?」
「今日だけだよ。実乃里が千裕たち見てくれてるから。」




「そっか。・・・・・・家は相変わらずか?」




鳳駕がさっきより低い声で言った。





「うん。まぁね。」




「そうか。・・・・・・いつでもこっちに来ていいんだからな。」





鳳駕は優しいから、深くは聞かずに優しいことを言う。




でも私は、鳳駕や実乃里に甘えてばかりいられない。





私の家の問題なんだから。




「ありがと。」




一応それだけ言って、ぎゅっと制服のスカートを掴んだ。





なんでか、知らないけど涙が出そうだったから。




こういう時に優しくされるのは苦手だ。




「スカート、シワになるぞ。」




「うん。・・・・・・分かってる。」





鳳駕にはなんでもお見通しみたいだ。




でも、スカート掴んでないと涙が出そう。




両親のことを考えると、何とも言えない気持ちになってどうしようもなく涙が出そうになる。




自分でもなんの涙なのか分からない。




でも無情に涙が出るんだ。




だから私はバルコニーに出るんだ。





「だから、1人で抱えんなって言ってんのに。」


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