幕末の恋と花のかおり【After story】
「赤、松田選手」
会場係に名前を呼ばれ、試合会場に入って礼をする。
相手は中学校の頃、全国大会でわたしが負けた相手だ。
絶対に負けられない。
あの時よりも、今の私の方が絶対に強い。
試合に出ることができなかった同級生
自分たちの跡を継ぐ後輩たち
今まで稽古をつけてくださった先生方
剣道を続けろと言ってくれた祐也さん
育ててくれた家族
それから、
私に剣道をする理由をくれた、幕末で出会ったみんな。
こんなにたくさんの人の思いを背負っているんだから、むしろ弱いはずがない。
試合開始線で、蹲踞をする。
私が平助くんと沖田さんを見つけたように、みんなにも私を見つけて欲しいから。
私は、私の剣道をする––––––––!
「始め!」
試合が始まる。
松田花織の二度目の剣道人生が幕を開ける。