幕末の恋と花のかおり【After story】




掛け声と竹刀と竹刀がぶつかり合う音が響く

私は第三会場の試合をしっかりとみる。

藤原、燈田、両者ともお互いのタイミングを探り合っていて、まだ打っていない。

それから数秒間。
剣先のせめぎ合いが続く。

次の瞬間、ふたりの空気が動いた。

燈田くんがすごいスピードで藤原くんの面を打ちにいったのだ。
私は、絶対決まったと思った。
だけど。
姿勢を全く崩さずに打ち込まれた竹刀を藤原くんが払った。


しばらくして、二人は間合いを取る。

余分に足を動かさなくても打てる距離––––「一足一刀の間合い」を藤原くんが取った瞬間。

腰からまっすぐ踏み込んで、藤原くんが喉に突きを繰り出す。

並大抵の人ならば、一本取られてしまいそうな技だけど、燈田くんが軽やかによける。


そして。私は確信した。


(この剣道、知ってる。)


素早くて、まっすぐな剣道をする、平助くん。
綺麗で、相手の突きを狙うのが上手い、沖田さん。


(やっと、会えた––––)

懐かしい人々の姿に、幕末の京の花のかおりが蘇る。




< 7 / 15 >

この作品をシェア

pagetop