ヒグラシ
述懐
日が落ちて夕焼けは夕闇へと変わる。流れる雲はどこまでも高く長く、秋の顔を覗かせていた。
少しでも身じろぎすると、キイキイと慣れ親しんだブランコの錆び付いた音が、耳の奥へと刺さるように響いてくる。
「このブランコも昔よく乗ったね」
「こんなに窮屈だっけ? 立ちこぎしたら確実に頭打つな」
「それは樹が大きくなりすぎたから!」
自分がどれだけ成長したのか分かっていないのか、的外れなことを言い出す樹に笑いが漏れてしまった。
隣同士ブランコに腰掛けて落ち着くと、樹は仕切り直すように私の方を向いて言う。
「……佳奈はさ、俺のことどう思ってる?」
私は、足で反動をつけて動かしていたブランコをぴたりと止めて樹を見た。樹は「あー、今の聞き方は卑怯だよな」と言いながらぽりぽりと頭をかいた。
「じゃあ俺から。ーー俺は、今も佳奈が好き。だから佳奈の、本当の気持ちも教えて欲しい」
同じ場所で、同じ人に、まさか2回も告白されるとは思わなかった。夢でも見ているようで、不思議な気分だ。本当は私も今すぐ、樹の思いに応えたいのに。