由良先輩はふしだら


ざわざわと人が行き交う雑音の中、クリアに私の耳に伝わった、大好きな優しい声。


この声に名前を呼ばれるのが本当に好きだ。


まさか、存在を知ってもらえるなんて。
未だに夢なんじゃないかと疑ってしまうほど。


「あっ、由良先輩……」


思わず、そう声を漏らして見惚れてしまう。


相変わらず綺麗なミルクティー色の髪の毛と、茶色の瞳。


薄手のベージュニットと、黒のスラックス。


シンプルな格好だけど、すらっと身長が高くてスタイルのいい先輩が着ると、ファッション雑誌の1ページを切り取ったかのようになる。


「ごめん、待った?」


そういいながら私の顔を見ている由良先輩に、ブンブンと首を振る。


スマホの時計を確認すると、時刻は9時55分だ。


待ったもなにも、待ち合わせ時間は10時。
先輩、5分前には着いているんだ。


先輩が早めに来てくれたことに、胸がキュンとなる。私を待たせないようにって、思ってくれたのかなって少し調子付いたことを考えたりして。


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