由良先輩はふしだら
「でもやっぱりそれ、由良先輩が誰よりも小林先生を知っていて小林先生のことを考えているからですよね?」
私は知っている。由良先輩が本当は誰よりも繊細で優しくて人の気持ちに寄り添える人だって。
先輩が気付いていないだけで。
先輩に女の子として好きだって思われなくても、先輩の隣が心地いいと思えるのは、紛れもなく、先輩がそういう人だから。
私のことを好きじゃなくてもこの人を好きになってよかったと思えるから。
「小林先生が夢を追いかけてる時から見てるんですもんね。きっと、簡単に先生の今の環境を壊しちゃいけないって心のどこかで思ってる。『ズルズルしてたら』って先輩言ったけど、それって立ち止まってちゃんと考えていた証拠じゃないですか」
そう言ってまっすぐ先輩の瞳を見つめると、
先輩の切れ長の茶色の瞳から、一筋の涙がツーっと流れた。