由良先輩はふしだら
「……えっ、」
「ごめんっ、急に……」
先輩の突然の涙に驚いていると、先輩が慌ててそう言いながら手で自分の涙を拭った。
こんなに綺麗に涙を流す人、生まれて初めてみた。
「そんな風に考えたことなんてなかったから、びっくりして、嬉しくて……」
涙を拭って優しく笑う先輩。
「由良先輩……」
「美子の言う通り、俺が気持ちを伝えることで愛菜とのこれまでの関係や愛菜がやっと作り上げてきた環境を全部壊すかもしれないってリスクはすげぇ怖いってどっかで思ってたかも。ずっと変わらない俺たちでいたいのに愛菜に触れたいって気持ちは日に日に強くなってて」
『意味わかんないよな』と付け足して手で顔を隠すようにする先輩。
私が知らない、先輩と小林先生の時間。
ヤキモチとかそんなレベルじゃない気持ちが私にも溢れてくる。
先輩の、小林先生への想い。
「先輩のそれって、恋じゃなくて、もう愛ですね」
「……えっ、愛?」
「はい。自分の益じゃなくてまずは相手の幸せを考えている。愛です。先輩、よくやってます」
そういって、テーブルに置かれた先輩の右手を両手で包みこむ。