由良先輩はふしだら


「はい、逃げないでよ〜」


ローファーに履き替えて昇降口を出ようとすると、後ろからそんな声がして手を掴まれた。


私の手を掴んで、そのままギュッと握る日高先輩。


「逃げないですよ。由良先輩が気を遣って日高先輩に頼んでくれたんだし……だから手、離してくれても大丈夫ですよ」


私がそういうと、先輩は「そっか」と手を離してくれた。


なんだろう。
日高先輩の笑顔は裏がありそうというか、なんでも見透かしてそうな笑顔で少し怖いなぁと思う。


これ以上、逆らうな、そんな風に言われてる気がして。


みんなが彼を恐れる理由って、これなんだろうな。



「あれから心変わりしまして〜とかないの?」


校門まで並んで歩いていると、日高先輩がそう言った。


あれから、とはきっと、この前階段でばったり会ってスリッパ姿を見られたときのことだろう。


『広真に愛想ついたらいつでも俺のところにおいで』


日高先輩はサラッと言ったっけ。


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