由良先輩はふしだら

《side 美子》


見たかった映画だったはずなのに。

上映中、映画の内容は一切頭に入ってこなかった。


由良先輩と付き合うことになってしまった、由良先輩に抱きつかれてしまった、由良先輩にほっぺにチューされちゃった。



さっき学校で起こった出来事を何度も頭の中でリピートさせては、勝手に頬を赤くして。



抱きしめた時の先輩の体温も、耳にかかった声も、頬にされたキスも、鮮明に覚えている。


これは夢なんかじゃない。


改めて再確認した。


「みーこ!美子!」


っ?!


「は、はいっ!」


ハッとして返事をすると、目の前にはこちらを睨みつけながらフライドポテトを食べてる栞の姿があった。


「なーにさっきからぼーっとしてんの」


ぎくっ!


さすがに栞にはバレちゃうよね…。



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