由良先輩はふしだら


「ちゃんと楽しんでる?ヒロくん」


「……っ、」


懐かしい声が、懐かしい呼び方をした。
正直、ちょっとドキッとして。


フワッとシャンプーの匂いが香った。


「……愛菜」


最近はずっと『由良くん』だったのに、こんな時に、昔の呼び方で呼ぶんだから、ずるい女だと思う。


「正直、つまんねぇなーって」


今は自由行動の時間で、グループのみんなはお土産屋さんをまわっている。


俺だけ早めに買い物を済ませて、店の外で美子とのメッセージを読み返していた。


美子がいないと、美子のことばっかり考えてて、綺麗な景色も、色とりどりのお土産もなんだかくすんで見る。


「小柴さん、だっけ?ヒロくんの新しい彼女さん。結構続いてるみたいじゃない。保健室におしゃべりしにくる女の子たちもよく話題にしてるから」


俺と美子が別れてまたヨリを戻したことはすぐに学校中に知れ渡って、俺たちの関係を知らない人はいないって感じで。

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