由良先輩はふしだら
「愛菜」
優しく名前を呼べば、戸惑いながら、彼女が顔を上げた。
気付けば、俺の方が背が高くなっていて。
愛菜も、女の人にしては少し背が高い方だけど。
ずっとずっと、好きだった。
でも、それはもう、過去のこと。
全部、ちゃんと、俺の大切な思い出だから。
丁寧に、アルバムに収めるみたいに。
「愛菜はずっと俺の初恋の相手で、大事な幼なじみだよ」
「……うん。……私も、ヒロくんのことはずっと大切な幼なじみで、大切な生徒だよ。それはこれからも変わらない。こんな私のこと、好きだったって言ってくれてありがとう」
「うん、」
美子と出会う前なら絶対に怖かったことが。
今はものすごく清々しくて、やっと、大きな肩の荷が下りた気がして。
「ヒロくんは、私に告白するのが怖かったって言ったけど、ヒロくんの気持ちに薄々気付いて逃げたのは私も同じ。答えられないってわかってて、それでもヒロくんとの幼なじみを全く断つ勇気がなかったから、中途半端に気付いてないフリをした。そのせいでたくさん傷つけて、ごめんなさい」
愛菜がそう言って頭を下げる。