由良先輩はふしだら





「何あれ」


「えっ、」


先輩との久しぶりのランチタイム。
いつもの外階段に向かって、先輩の隣に腰かけた瞬間、先輩の声に思わず聞き返す。


「ほ、ほんとですよね〜勝地のやつ!あ、でもきつく言っといたんで大丈夫ですよ!」


「全然大丈夫じゃねー」


後ろ髪をわしゃわしゃとしながらそういう先輩。
先輩にしては珍しい光景で思わず見入ってしまう。


「……美子、ほんっと気付いてないんだ」


「ん?な、何がですか?」


先輩は「まじか……」と言って頭を抱えた。


4日ぶりだっていうのに、先輩は、私に会えて全然嬉しくなさそうだ。


これからたくさん、お土産話しも聞きたかったのに。


「まぁ、いい。っていうか、よくもまあ、俺がちゃんと色々終わらせてきた間に、美子はほかの男の家でケーキねぇ〜」


「え、終わらせたって……?」


「愛菜と、ちゃんと話した。美子のおかげで前向けるようになったって。ちゃんと心から、結婚のこともおめでとうって言えた」


「あっ、そ、そうなんですか!?」


先輩のセリフに、驚いてじわじわと嬉しさが込み上げてくる。


ちゃんと、思い出に、できたんだ。


< 290 / 300 >

この作品をシェア

pagetop