由良先輩はふしだら





「あ、ごめん、美子ちゃん。待った?」


放課後、昇降口の方で先輩を待っていると優しい声が振ってきて慌てて顔を横に向ける。


「は、由良先輩っ」


くることはわかっていたのに、いざこうやって目の前にすると、やっぱり夢なんじゃないかと疑ってしまう。

それくらい、キラキラしてて、私の横に彼がいるなんて信じられないんだ。しかも、形だけとはいえ、付き合ってるんだもん。


「私も今来たところなんで大丈夫です!楽しみすぎて走って教室出てきちゃって……」


へへっと最後に照れ隠しに笑う。


「なにそれ、可愛い」


っ?!


いや、わかっている。由良先輩の『可愛い』は『ごきげんよう』という挨拶のようなもの。


わかってる、そう言い聞かせながらも、恥ずかしくて、顔が熱くなる。


「じゃ、行こっか」


「あっ、」


不意に、私の右手は先輩によって握られて。


うわぁ、嘘でしょ、なんてこと。
手汗が!!


「由良先輩……」


不安で声をかけると、先輩はこちらを向いて、ニコッと優しく笑ってから再び歩き出した。


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