由良先輩はふしだら


「いや、あの、ハト……」


「え?ハト?……もしかして、先輩ハト嫌いですか?」


遠慮がちにそう聞き返す。


「……うん。苦手。子供の頃、ハトの集団に囲まれたことがあって。怖くて大泣きしたんだよね。それからずっとトラウマで……」


先輩は、そう言って、後頭部をかいてから再びクレープを口にした。


「へー!そうなんですか……」


なんだと……。
容姿端麗、成績優秀。
誰からも好かれている、完璧な由良先輩が。
あの、由良先輩がっ!


ハトが苦手?!


「ふっ、ふふっ」


「あ、美子ちゃん笑ったね」


「いや、だって……ハトに囲まれて大泣きしている小さい頃の由良先輩想像したら……ふふっ、」


笑い声を我慢しようにも、どうもツボに入ってしまった。


爽やかでどこか他の先輩たちよりも大人びて見える先輩に、まさかこんな弱点があったとは。


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