由良先輩はふしだら
《side 広真》


「んっ、うまい!」


「ほ、本当ですか?」


美子が俺の顔をまじまじと見ながら聞いてくる。


「本当だよ。おにぎりの中で、鮭が一番好きだから、すげーテンション上がる」


笑ってそう言うと、彼女は安心したようにホッと胸をなでおろしてから「よかったですっ」と頬を赤らめながら、照れくさかったのか、目をそらした。


不思議と、美子の前では、自然と笑える。
クレープを一緒に食べた時も思ったけれど。


でも、やっぱり……。
おにぎり、愛菜もよく作ってくれてたな、なんて思い出がよぎる。


お互い、親が遅くまで仕事で。


よく、愛菜が俺んちに来ては、おにぎりを握ってくれたりしてたっけ。


吹っ切れるなんて、そんなことできるわけなくて。


何かあれば、ふと愛菜のことばかりが浮かぶ。


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