HARUKA~愛~
せっかくのゴールデンウイークだというのに、私には休みは1日も無い。

毎日部活を朝から晩までこなし、その後バイトに行っている。

バイトのことは誰にも告げ口しないという条件付きで、ついこの前、遥奏と宙太くんに打ち明けたばかりだ。

私の家庭環境を知らない2人は、「そんな酷使しなくても良いんじゃね?」と軽々しく言っていた。
それが普通の感覚だと思う。
けれど私は仕事しないと生きていけないからやるしかないのだ。


そして今日もまた、バイトだった。

遥奏に断り、いつもより1時間早く部活を終えた私は、小走りでバイト先に向かった。


「おはようございまーす」

「…」


誰も返してくれる人はいない。

皆自分の仕事で精一杯なのだ。


私もパートのおばさんの隣に並び、スポンジを手にした。

洗剤をたっぷり付けて大量に積み上げられた皿を1枚ずつ洗って食器洗浄機に投入する。

ちらりとおばさんが私の手元を窺う。

私は息を殺しながらひたすら皿を洗い続けた。




しばらくしておばさんは終業時刻になり、ボソボソと何かを呟いて去って行った。

おばさんが帰る頃には、だいぶ客足は遠のいている。

皿洗いが下火になると、リーダーから指示が入る。


「皿洗いB班、店内掃除開始!」


この号令と共におばさん4人プラス私は厨房からフロアに向かい、除菌を始める。





表舞台に立てない、表舞台は似合わない私にとって天職とも思える仕事を終えるのは、いつもたいてい11時を過ぎている。
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