HARUKA~愛~
母は闘病中、私に売店から料理本を買ってくれた。


「お母さんね、豆腐ハンバーグ好きなの。美味しそうね~」

「ナスのミートソーススパゲティも美味しそうね。食べたいなあ…」

「これ見て。晴香の大好きなオムライス。これはちょっと本格的かしらね~」


母は直接的に私に料理を作れとは言わなかった。

食べたいなあ…と言うだけで、その後続くはずの言葉を飲んでいた。



―――お母さん、もうすぐで死んじゃうから、お父さんに作ってあげてね。



母がその言葉を口にすることは決してなかった。
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