HARUKA~愛~
「アオハル、ちょっと来い!」


課外終わり、急に宙太くんが私の席に飛んで来たかと思ったら、私の右腕をがっしりと掴み、懐かしのあの場所に連れて来られた。

光が差し込み、埃がふわふわと浮かんでいるのが見えた。


「アオハル、お前、忘れてるワケじゃないよな?」

「一体何のこと?」

「何のことって、遥奏の誕生日に決まってんじゃん!今年は塾とかあって大変だから、あいつの誕生日くらいは3人で集まろうってこの前話したじゃん!」


そう言われたが、私の頭の中には記憶されていなかったらしく、ポカンとしてしまった。

カレシの誕生日を覚えていないなんて、カノジョとして失格だと思った。

私は自分のことしか見えていない。
自分のことだけで精一杯だった。

宙太くんにも、遥奏にも言っていないことがあったのだ。


宙太くんは続けた。


「あいつにサプライズしようと思ってんだけど、何すりゃいいと思う?俺的には、遥奏の好きなもんの特大サイズを用意するってのがなかなか良いアイデアだと思うんだけど、アオハルはどう?」

「それで良いと思うよ」

「何だよ、“それで”って!?」

「ごめん、ごめん。それ“が”良いよ!遥奏、カルボナーラとmowのバニラアイス好きだから、可愛くデコったら喜ぶと思う」

「よし!そうと決まれば、準備だな!アイス何個買えばいっかなあ?あとデコるためにチョコペン?あとは…」


彼の頭の中はユニバース。

独創的で斬新なアイデアを生み出してくれるはず。

私は凡人だからサプライズの計画なんて出来ない。

宙太くんの意見にウンウンと頷き、たまに助言するくらいでちょうど良い。

私は1年間で、彼との絶妙なバランスを身に付けていた。


「こんな所でコソコソやってるとバレるから、あとで連絡して。私、今日は早めに帰るから」


強制的に会話をシャットダウンして私は大急ぎで階段を駆け降り、教室に戻った。

席替えで真ん中の列の1番後ろになった私は、みんなの一挙手一投足を見ることが出来る。

午後まで勉強して行く人、すぐに帰ってしまう人、友達と遊びに行く人、部活の引退がまだの人…と色んな人がいる。


私はそのどれにも当てはまらない。


「ハル、今日は帰るの?」

「うん、そうだよ。遥奏は?」

「オレはこれから塾。とりあえず推薦で行けそうだから面接の練習してもらってる」

「そうなんだ。頑張ってね」


お互いに「また明日」と言い合って私達は別れた。
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