HARUKA~愛~
お父さんは真面目で、純粋な人。

そして冒険心に満ちている。

常に新しいことを求め、刺激に溢れた生活を送りたがっていた父は、しっかり者の母にいつもたしなめられていた。 
母が空に帰り、私が体調を崩した時は必死に病院を探し、いくつも渡り歩いた。

それが最初で最後の父親らしい振る舞いだった。


高校の入学式の日、父は帰ると言ったのに帰って来なかった。

丸テーブルに、ご飯と味噌汁、たくあんを並べ、刺身が到着するのを夜通し待った。

結局、私は冷たくなったそれらを胃に流し込み、眠たい目をこすりながら学校へとふらつきながら向かった。


父は入学式の日、3度目のアタックに新潟の温泉宿まで出かけていたらしい。

私ではなく、出会って間もない美人女将を選んだのだ。






私は…負けたのだ。

一緒に過ごした時間が愛の大きさに比例するなんて嘘だ。

血のつながりがあったとしても、たった1人の娘だとしても、父は私に会いに来なかった。













私が自分の存在意義を見失った瞬間だった。
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