HARUKA~愛~
体力が回復し、私は無事に2日で退院出来た。


その後すぐに引越をし、新しい小さくなった我が家での生活が始まった。


そして、皿洗いのバイトは辞め、私はカフェさくらに戻った。

挨拶に行った時、マスターは以前のようにしっかりと腰をピンと伸ばしてコーヒーを淹れていた。

マスターは無言の気配りが出来る人。

私が何も言わなくても、あの芳醇な香りのブラックコーヒーを淹れてくれた。

今私が飲みたいものを瞬時に察することが出来るのは、世界中どこを探し回ってもやっぱりマスターしかいないと思う。

マスターは、私の1番の良き理解者だ。


その日、日向さんはコーヒー豆を探しにブラジルまで行ってしまったらしく不在だった。  

マスターはそんな孫に呆れていると言っていたけど、本当は嬉しいんだと思う。

自分の店と意志を継いでくれそうな頼れる孫だ。
嬉しくなかったらおかしい。


私は和やかな雰囲気の中、温かい人達に囲まれながらまた仕事が出来ると思うと、飛び上がりそうな位に嬉しくて、胸が幸せな気持ちでいっぱいになった。
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