HARUKA~愛~
時が止まった…




気がした。




「ハル、やったよ!グランプリだ!!」

「おい、マジかよ?!やったな、遥奏!!…遥奏、大好きだ!!」


私より先に宙太くんが遥奏に抱きついて涙や鼻水をベタベタつけながら、幼稚園児のごとく、わんわん大声を上げて泣いた。

勘弁してくれといいたげな遥奏に気を使うこと無く、彼は泣き続ける。

周りにいるクラスメートはドン引き。

私も何も言えず、ただ立ち尽くしていた。


「宙太、離れろ!!この後、写真撮影したりすんだから、衣装濡らすな!」

「遥奏、俺はお前を誇りに思う。本当に本当にありがとう!!」

「それはいいから離れろって!!」


やっぱり、遥奏と宙太くんは名コンビだな。

口には出さなかったけど、ちょっと嫉妬したし、遥奏のことが大好きでも、宙太くんの大好きにはかなわない気がした。

この2人の間には目に見えない“絆”がある。







本当に大切なものは目に見えない。
心で見なくちゃよく見えないんだ。
     






遥奏は前に、本当に大切なものは何だろうと考えてるって言っていた。


私には見える。

遥奏の1番大切なものが…。



たぶんそれは私じゃない。

私であってほしいけど、そうであってはならない。

私と紡いできた時間より、宙太くんと紡いできた時間の方が遥かに長いから。













―――私は遥奏の1番になれない。












心のどこかではわかっていたけれど、認めたくなかった。

認めたら遥奏との関係が壊れてしまう気がしたんだ。





私はどうしたら良いのだろう?

この距離感を保ったままで本当に良いのだろうか?



遥奏と宙太くんの間に入ってしまった私は、今更ながら後悔した。


遥奏は優しい。

優しいから私を見捨てないでいてれる。

頼りにして良いと言ってくれる。


だけど、逆にその言葉が私の心を苦しめる。

遥奏に優しくされればされるほど、私は罪悪感を感じてしまう。


そして、不安になる。

遥奏は私をカノジョとして見ているのだろうか。

友達の延長なのではないか…。













頭の中で色々な感情がごちゃ混ぜになって、混乱していた。

頭が硬い岩に何度もぶつかっているような強烈な痛みを感じ、私は誰にも気づかれないようにこっそり体育館を後にした。
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